泊発電所3号機の定期検査の状況について |
2012年11月8日
泊発電所3号機(加圧水型軽水炉、定格電気出力91万2千kW)は、平成24年5月5日から8月上旬の予定で第2回定期検査を実施していますが、炉内熱電対※1(以下、「T/C」という。)の引出管※2の点検調査のため、定期検査期間を延長する見込みとなりました。
原子炉を補助的に監視しているT/C39本のうち、運転中に測定値の指示不良が認められていた1本について、今回の定期検査で取替えを実施しました。取り外したT/Cの外観を点検したところ、T/Cの保護管に損傷が認められ、損傷部位を調査した結果、損傷は摩耗によるものと判断しました。
平成24年6月7日、当該摩耗の発生原因について調査を進めるため、当該T/Cを挿入している引出管の外観点検を実施したところ、引出管にも損傷を確認しました。
T/Cおよび引出管の損傷は、原子炉の安全性や運転継続に影響を与えるものではなく、原子炉等規制法に基づく経済産業省への報告などを要するものではありません。
今後、他の引出管の点検、損傷原因の調査などを実施いたします。
機材準備などを含め、現時点において、1ヶ月半程度の調査期間を見込んでおりますが、定期検査工程の延長期間については、点検および原因調査の結果を踏まえ、見通しがついた段階で別途お知らせします。
なお、今回の事象による環境への放射能の影響はありません。
当社は、泊発電所3号機の第2回定期検査中に損傷が確認された、原子炉を補助的に監視しているT/Cの引出管の原因調査を進めてまいりました。
他の引出管を点検したところ、既にお知らせ済みの1本に加えもう1本の引出管に損傷が認められ、これら2本の引出管について損傷原因を調査した結果、頂部プレナム※3内の1次冷却材の流れにより当該の引出管が共振※4したことによる高サイクル疲労※5割れであると判断しました。
再発防止対策(共振を防ぐ対策)として、以下の2つの対策を講じることとしました。
- 頂部プレナムに1次冷却材を導くフローノズル※6の内径を小さくし、流れ込む1次冷却材流量を低減させることにより、引出管に作用する流体力を低減させる。
- 損傷した2本の引出管に支持金具を増設することにより、引出管の剛性を向上させる。
なお、上記対策工事を実施するための手続きおよび工程について、現在、検討中です。
当社は、泊発電所3号機T/C引出管損傷の再発防止対策に係る工事の内容について、原子力規制庁に説明するとともに、当該工事の手続き(電気事業法に基づく工事計画認可申請および工事計画届出)の要否について確認してまいりましたが、11月7日原子力規制委員会から受領した「北海道電力株式会社泊発電所3号機の炉内熱電対引出管損傷の再発防止対策工事に係る手続きの要否について(平成24年11月7日 原子力規制委員会)」により当該工事の手続きは不要との回答を頂いたことから、上記対策工事を開始することとしました。工事は、12月中に終了する予定です。
これにより、当初、8月上旬までを予定していた定期検査は、6ヶ月程度延長することとなります。
なお、発電再開に向けては、現在、原子力規制委員会において検討が行われている新たな安全基準を踏まえ、追加で必要な対策があれば実施するなど、適切に対応してまいります。
-
※1
炉内熱電対(T/C)
原子炉出口の水の温度を測定するための温度計で、素線をステンレス製の保護管で覆い、絶縁材(酸化アルミニウム)を充てんしたもの。 -
※2
引出管
T/Cを挿入し、原子炉容器内の所定の温度測定位置まで導くために取り付けられたステンレス製の管。 -
※3
頂部プレナム
原子炉容器内の最上部の半球状の空間領域を指す。 -
※4
共振
機器等は、外力を受けたときに、その振動特性に応じて早く揺れるか、ゆっくり揺れるかといった固有の揺れやすい振動数(1秒当たりの振動の回数)を持っており、これを固有振動数という。
共振とは、機器等がある振動数で変化する外力を受けて振動するとき、外力の振動数がその機器等の固有振動数に近くなると振れ幅が極めて大きくなる現象をいう。 -
※5
高サイクル疲労
材料に力を繰り返して加えた結果(一般的に、繰り返し数が10,000回以上)、材料が壊れてしまう現象。 -
※6
フローノズル
原子炉容器に流入した1次冷却材の一部を直接頂部プレナムに導くためのパイプ状の部品であり、ノズル先端部に孔あきプラグを設置し流量を調節している。