平成23年福島第一原子力発電所事故を踏まえたシビアアクシデントへの対応に関する措置に係る実施状況報告書の提出について |
2011年6月14日
本日(6月7日)、経済産業省より「平成23年福島第一原子力発電所事故を踏まえた他の原子力発電所におけるシビアアクシデントへの対応に関する措置の実施について(指示)」を受領しました。
指示文書の内容は以下のとおりです。
今後、詳細を検討するとともに、実施状況を速やかに取りまとめ、6月14日までに経済産業省に報告致します。
【経済産業省からの指示内容】
経済産業省(以下「当省」という。)は、福島第一原子力発電所事故を踏まえ、各電気事業者等に対し、津波による全交流電源等喪失を想定した緊急安全対策の実施を指示し、報告を受け、厳格な確認を行った。その結果、各電気事業者等において緊急安全対策が適切に実施されていることを確認し、炉心損傷等の発生防止に必要な安全性は確保されていると判断した。
今般、原子力災害対策本部において、同事故に関する報告書をとりまとめ、同事故を収束するための懸命な作業の中で抽出された課題から、万一シビアアクシデント(炉心の重大な損傷等)が発生した場合でも迅速に対応するための措置を整理した。
以上を踏まえ、当省は、これらの措置のうち、直ちに取り組むべき措置として、各電気事業者等に対し、以下の事項について実施するとともに、その状況を6月14日までに報告することを求める。
- 中央制御室の作業環境の確保
緊急時において、放射線防護等により中央制御室の作業環境を確保するため、全ての交流電源が喪失したときにおいても、電源車による電力供給により中央制御室の非常用換気空調系設備(再循環系)を運転可能とする措置を講じること。 - 緊急時における発電所構内通信手段の確保
緊急時において、発電所構内作業の円滑化を図るため、全ての交流電源が喪失したときにおける確実な発電所構内の通信手段を確保するための措置を講じること。 - 高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備
緊急時において、作業員の放射線防護及び放射線管理を確実なものとするため、事業者間における相互融通を含めた高線量対応防護服、個人線量計等の資機材を確保するための措置を講じるとともに、緊急時に放射線管理を行うことができる要員を拡充できる体制を整備すること。 - 水素爆発防止対策
炉心損傷等により生じる水素の爆発による施設の破壊を防止するため、緊急時において炉心損傷等により生じる水素が原子炉建屋等に多量に滞留することを防止するための措置を講じること。 - がれき撤去用の重機の配備
緊急時における構内作業の迅速化を図るため、ホイールローダー等の重機を配備するなどの津波等により生じたがれきを迅速に撤去することができるための措置を講じること。
当社は、上記指示に基づき、シビアアクシデントへの対応に関する対応方策を策定するとともに、その実施状況を取りまとめ、本日、経済産業省に報告しました。
泊発電所では、既に実施した緊急安全対策や中長期対策により、シビアアクシデントを回避できると考えていますが、今回報告した対策は、万が一、シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応することができるよう策定したものです。
- 中央制御室の作業環境の確保
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
今回の事故では、中央制御室は放射線量が高くなり、中央制御室の居住性が低下しました。
このため、緊急時において、中央制御室の作業環境を確保するため、全交流電源喪失時においても、電源車による電力供給により中央制御室の非常用換気空調系設備(再循環系)を運転可能とする必要があります。 - (2)当社の対応方策
1次冷却材喪失事故時や中央制御室にて高放射線が検知された場合、中央制御室の空調は通常運転から閉回路循環運転に切り替わり、よう素除去フィルタが装着されたフィルタユニットを通すことにより空気が浄化されます。
全交流電源喪失時には、中央制御室の空調が停止しますが、長期間の事故対応活動を継続的に実施するため、移動発電機車から中央制御室非常用循環ファン等へ給電するなどし、閉回路循環運転することにより空気を浄化し、中央制御室内の居住性を維持できるように運転手順を整備しました。
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
- 緊急時における発電所構内通信手段等の確保
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
今回の事故では、地震及び津波による全交流電源喪失により発電所構内での通信環境や照明の悪化により、事故対応活動に大きな困難が生じました。
このため、緊急時において、発電所構内作業の円滑化を図るため、全交流電源喪失時における確実な発電所構内の通信手段及び照明を確保する必要があります。 - (2)当社の対応方策
長時間の全交流電源喪失や津波による浸水があった場合、構内PHS電源装置は使用できなくなる可能性がありますが、構内PHS交換機は高所に設置しているため、構内PHS電源装置の代替措置を講じることで、構内PHSの機能を確保することができます。この代替措置として、既に配備済みの移動発電機車及び新たに配備する小型発電機による給電対策を実施しました。
また、構内PHSの他の通信手段として、屋外用はトランシーバおよび衛星電話、屋内用は有線仮設電話(乾電池駆動)等を配備済みです。
照明については、全交流電源喪失が発生した場合でも蓄電池等により非常用照明を一定期間確保することが可能ですが、長時間の全交流電源喪失時には使用できなくなるため、ハンドライト等を配備済みです。
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
- 高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
今回の事故では、事象の進展により、空間線量率が極めて高くなり、作業を円滑に進める上での大きな課題となっています。
また、事故の初期段階において、個人線量計やマスクなどの資機材の不足、空気中の放射性物質の濃度測定などの放射線管理上の対応の遅れなど、適切な放射線管理ができない状態が生じました。
このため、高線量作業環境下での遮へい機能を有する防護服(以下、「高線量対応防護服」という。)や個人線量計などの必要な資機材を備えておくこと、放射線管理業務の急増に対応して、放射線管理要員以外の者が助勢することにより、放射線管理要員が本来の業務を行えるようにする仕組みをあらかじめ構築しておくことが有用です。 - (2)当社の対応方策
事故時における高線量区域での作業のため、高線量対応防護服を配備します。(平成23年7月末までに完了予定)
また、高線量対応防護服、個人線量計及び全面マスクといった、現在、提供資機材リスト※2に定められていない資機材についても、必要に応じ原子力事業者間で相互に融通しあう枠組みを整備しました。
緊急時においては、必要に応じて、放射線管理要員以外の要員が線量計の貸し出し、データ入力等の業務を行い、放射線管理要員を応援する体制を整備しました。
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
- 水素爆発防止対策
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
今回の事故では、複数の号機の原子炉建屋で格納容器から漏えいした水素が原因とみられる爆発が発生し、事故をより重大なものとしました。
このため、水素爆発による施設の破壊を防止するため、原子炉建屋等に水素が多量に滞留することを防止するための措置を講じる必要があります。 - (2)当社の対応方策
冷やす機能が喪失し、燃料集合体損傷に伴い発生した水素が格納容器から漏えいした場合に、格納容器外で水素が多量に滞留することを防止するため、格納容器に隣接するアニュラス※3部に漏えいしてきた水素をアニュラス排気設備(フィルタを含む)により外部に放出する運転手順を整備しました。
今後、更に、電源を必要としない触媒式水素再結合装置を格納容器内に設置するなどし、格納容器内の水素濃度の低減を図ることとします。(今後3年程度で設置予定)
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
- がれき撤去用の重機の配備
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
今回の事故では、津波来襲後に発電所構内に漂着物やがれきが散乱する状況となり、現場での事故対応が十分に機能しませんでした。
このため、津波等により生じたがれきを迅速に撤去することができる重機の配備が必要です。 - (2)当社の対応方策
津波発生後、構内道路等に散乱するがれきを除去するため、4月20日にホイールローダー1台を発電所構内の津波の影響を受けない高所(標高31m)に配備しています。
- (1)福島第一原子力発電所事故の教訓※1
今後も引き続き、今回の事故に至った原因や経緯についての情報収集に努めるとともに、新たな対策が必要になれば、適切に対処し、泊発電所の安全確保に万全を期してまいります。
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※1
福島第一原子力発電所事故の教訓
平成23年6月7日、国が国際原子力機関(IAEA)に提出した「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福島原子力発電所事故について-」で報告されている教訓 -
※2
提供資機材リスト
原子力事業者が、緊急時における資機材の貸与や要員の派遣について協力することを目的に予め準備しておく貸与資機材のリスト
(「原子力災害時における原子力事業者間協力協定」にて締結) -
※3
アニュラス
原子炉格納容器のまわりに設けられた空間で、事故時に負圧にして原子炉格納容器から漏えいする放射性物質を閉じ込める機能を持たせている
【添付資料】