試運転中の泊発電所3号機におけるB-非常用ディーゼル発電機の損傷に係る原因と対策について |
2009年9月15日
平成21年8月19日、定格出力にて試運転中の泊発電所3号機において、3B-非常用ディーゼル発電機*1の定期試験を実施していたところ、15時13分、過給機*2の不調により、3B-非常用ディーゼル発電機を手動停止しました。
この状態は、保安規定に定める運転上の制限*3を満足していないことから、15時14分、運転上の制限からの逸脱を宣言しました。
原因は調査中です。
なお、3A-非常用ディーゼル発電機の健全性は確認済みです。
また、本事象による外部への放射能の影響はありません。
これまで点検を実施した結果、平成21年8月21日、過給機に損傷が発見され、非常用ディーゼル発電機に必要な機能を有していないことを確認しました。
本件については、原子炉等規制法に基づき原子力安全・保安院に、また、安全協定に基づき北海道及び地元四カ町村に連絡済みです。
なお、引き続き原因を調査してまいります。
また、3号機については、計画していたプラントを停止した状態での設備・機器全般の点検を行うため、平成21年8月21日16時頃から出力を徐々に低下させ、22時頃発電を停止する予定です。
本日、調査結果を踏まえ、泊発電所3号機 B-非常用ディーゼル発電機(以下、「DG」という。)過給機の損傷について、原因と対策をとりまとめましたのでお知らせします。
- 調査結果
DGメーカー工場(以下、「工場」という。)等における調査結果は以下のとおりです。
- a. 損傷が発見された当該過給機の内部を点検した結果、多くの箇所で摺動傷・打痕・摩耗・変形を確認しました。その中でも、ノズルリング、ノズル押え板については、ほぼ全周にわたる損傷、ノズル押え板固定ボルト(以下、「当該ボルト」という。)、これに隣接するタービンブレードについては、全数にわたる損傷を確認しました。
- b. 上記a項の損傷部位の破面観察の結果、疲労破面は見つからず、いずれも強い外力で破壊されたときに見られる破面を確認しました。
- c. ローターシャフトディスク部には、熱影響によると思われる変色が見られました。
- d. 当該過給機開放時に当該ボルトの状態を確認したところ、当該ボルトはゆるんでおり、ねじが効いていませんでした。また、当該ボルトはいずれも頭部が摩耗・変形していました。
- e. 当該ボルト締付け方法について調査を行った結果、ボルトサイズに応じた標準的な締付け管理基準はありましたが、締付け力に応じた具体的な締付け方法の指示はありませんでした。そのため、締付け方法によっては、締付け管理基準に指示された所定の締付け力が付与できない可能性を確認しました。
なお、当該DG本体については、外観検査等を実施した結果、異常のないことを確認しました。
- 推定原因
前項の調査結果から、本事象の原因について、次のように推定しました。
- a. 工場における過給機の製作において、作業手順書で当該ボルトの締付け方法の記載が不明確であったことから、当該ボルトの締付け作業で、所定の締付け力が付与されませんでした。
- b. 工場における製作時の当該ボルト締付けが不十分であったため、その後の運転で、当該ボルトが、振動等の影響によりゆるみ、徐々に抜け出しました。その結果、過給機内で当該ボルトとローターシャフトディスクの接触・過熱が生じ、ローターシャフトディスクの材料強度が低下することにより変形し、タービンブレードが浮き上がりました。浮き上がったタービンブレードとシュラウドリングとの接触により、タービンブレードが損傷するとともに抜け出し、過給機内に飛散しました。そのため、ローターシャフトの偏心、各部の接触等に進展し、過給機の損傷に至りました。
- 再発防止対策
今回の事象の原因を踏まえた再発防止対策は、以下のとおりです。
- (1)過給機周りの対策
- a. 当該過給機については、工場において新品にて、新たに組み立てますが、ボルトについては所定の締付け力が付与されていることを確認しました。
- b. B-DGの残り1台の過給機については、工場において点検を行い、ゆるみ等の異常がないことを確認しましたが、念のため当該過給機と同様に、ボルトに所定の締付け力が付与されていることを確認しました。
- c. A-DGの過給機についても、B-DG復旧後、工場において同様な対策を行います。
以上の対策については、DGメーカーにおいて、所定の締付け力が付与されるようボルト締付け方法を明確にしたうえで、これを作業手順書に明記し、施工管理を確実にします。
- (2)調達管理の改善
今回と同様に振動等によりゆるむ可能性のある回転機器等の内部のボルトの締付作業に対し、締付基準の考え方を明確にし、締付部の重要度に応じ、適切な手順を定めることをメーカー等の調達先に要求するよう当社の調達管理要領の中で規定します。なお、調達先における要求事項の遵守状況は、監査などにより確認します。
- (1)過給機周りの対策
本件については、原子炉等規制法に基づき原子力安全・保安院に、また、安全協定に基づき北海道及び地元四カ町村に報告済みです。
原子力安全・保安院への報告については、当社本店1階「原子力ふれあいコーナー」および原子力PRセンター(とまりん館)「原子力情報公開コーナー」において公開しています。
基準1 | 基準2 | 基準3 | 評価レベル |
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- | - | 0+ | 0+ |
INES:国際原子力事象評価尺度
-
※1
非常用ディーゼル発電機
- 外部電源が喪失した場合に、発電所を安全に停止するために必要な電源を供給し、さらに工学的安全施設作動のための電源を供給する。
- 2基設置しており、1カ月に1回、ディーゼル発電機を待機状態から起動し、定格出力で運転可能であることを確認する。
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※2
過給機
- 機関の排気ガスのエネルギーを利用しタービンを回すことにより燃焼用空気を圧縮して機関に供給する装置(ターボチャージャー)。
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※3
保安規定に定める運転上の制限
- 保安規定に定める運転上の制限においては、運転中は非常用ディーゼル発電機が2基とも動作可能であることを規定している。
【添付資料】
原因と対策の概要 [PDF:603KB]