泊発電所1号機および2号機 経済産業省からの指示文書に対する報告について |
2009年9月4日
第14回定期検査中の泊発電所2号機(加圧水型軽水炉、定格電気出力57万9千kW)において、平成21年8月2日、制御棒駆動装置動作試験※1を行っていましたが、中性子源領域中性子束高による原子炉トリップ機能※2が必要であるところ、動作機能が解除されていることを確認しました。
この状況は、保安規定第33条に定める運転上の制限※3を満足しないことから19時18分に運転上の制限を逸脱していたと判断しました。
同時に、原子炉トリップしゃ断器※4を開放し、運転上の制限の逸脱を解除しました。
なお、制御棒駆動装置動作試験時において、原子炉トリップ機能が解除されていても、ほう素濃度が適切に管理されており、臨界には至らず、原子炉の安全性は確保されています。
また、今回の事象による環境への放射能の影響はありません。
その後、泊発電所1号機、2号機および3号機について、同様の状況の有無を確認した結果、泊発電所1号機第15回定期検査における制御棒駆動装置動作試験(平成20年11月23日および30日実施)においても、運転上の制限を満足しない状況であったことを確認しました。
なお、2号機と同様に試験時には、ほう素濃度が適切に管理されており、臨界には至らず、原子炉の安全性は確保されていました。
また、環境への放射能の影響はありませんでした。
本件についても、経済産業省に報告済みです。
平成21年8月7日、経済産業省より、本事象が保安規定第33条第1項および第86条第1項に違反していると判断され、指示文書を受領しました。
保安規定第33条第1項では、「原子炉保護系計装のうち、中性子源領域中性子束高がモード5(a)において動作可能であること」※5を運転上の制限とする旨規定していますが、1号機は平成20年11月23日および30日、2号機は平成21年8月2日に当該計装が阻止されており、動作可能であることを満足していなかったことから、保安規定を満足していなかったと判断されたものです。
保安規定第86条第1項では、「運転上の制限を満足していないことを速やかに判断する」旨規定していますが、2号機は運転上の制限を満足していない状況を確認していたにもかかわらず、事実確認に時間を費やしたため、速やかな判断を行わないまま運転上の制限を満足できない場合の措置が行われなかったことから、保安規定を満足していなかったと判断されたものです。
当社としては、今回の経済産業省の指示を真摯に受け止め、この指示に基づき、原因を究明し、再発防止策を策定し、9月7日までに経済産業省に報告いたします。
また、根本原因分析を行い、その結果を経済産業省に報告するとともに、再発防止対策を確実に実施してまいります。
本件については、「泊発電所に関する通報連絡及び公表基準」に基づき北海道および地元4カ町村に連絡済みです。
本件について、原因と再発防止策を取り纏め、本日、経済産業省に報告しました。
- 事象の概要
今回の制御棒駆動装置動作試験は、1号機第15回定期検査(平成20年8月4日~平成21年1月15日)および2号機第14回定期検査(平成21年5月8日から実施中)で実施した原子炉容器上蓋取替工事に伴い保修担当部署が行ったものです。
当該試験においては、運転モード※6の枝番※7が変更となり、保安規定上、原子炉トリップ機能が必要となりますが、その機能が阻止されていました。
通常時、運転モードの管理は発電担当部署が一元的に行っておりますが、当該試験は発電担当部署による運転操作以外の作業であったことから、発電担当部署による運転モード管理に不十分な面が生じ運転上の制限の逸脱を発生させたものです。 - 保安規定第33条第1項違反に対する主な原因と再発防止策
運転モードの枝番の変更時の管理に関する社内規程への記載および教育が十分でなかったこと等から生じたものです。
再発防止策として、社内規程の改正を行い管理すべき事項を明確にするとともに、教育の充実を図ります。 - 保安規定第86条第1項違反に対する主な原因と再発防止策
速やかに運転上の制限逸脱の判断を行うことについての教育が十分でなかったこと等から生じたものです。
再発防止策として、運転上の制限逸脱の判断を速やかに行うこと等について、関係者に文書にて指示しました。また、社内規程の改正を行い、今後、計画的に運転上の制限逸脱の判断に関する教育訓練を行います。
なお、原因と再発防止策の概要については、添付資料のとおりです。
当社としては、本日報告した再発防止策を確実に実施するとともに、今後、根本原因分析を行ってまいります。
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※1
制御棒駆動装置動作試験
制御棒が正常に引き抜き・挿入できることを確認する試験。 -
※2
中性子源領域中性子束高による原子炉トリップ機能
原子炉臨界前の状態において急激な中性子の密度上昇により制御棒を自動的に挿入させ、原子炉を安全に停止させるために必要な機能。 -
※3
運転上の制限
保安規定では原子炉の運転状態に応じ、「運転上の制限」などが定められており、保安規定第33条では、原子炉トリップしゃ断器が閉じ、制御棒の引き抜きができる状態において中性子源領域中性子束高による原子炉トリップ機能が要求されている。 -
※4
原子炉トリップしゃ断器
制御棒駆動装置への電源を供給・しゃ断する機能を有する装置。 -
※5
中性子源領域中性子束高がモード5(a)において動作可能であること
原子炉が停止している状態であっても、原子炉トリップしゃ断器が閉じており、制御棒の引き抜きが行える場合は、中性子源領域中性子束高による原子炉トリップ機能が必要。 -
※6
運転モード
原子炉の運転状態。運転状態に応じてモード1~6が定義されている。 -
※7
枝番
モード5(a)など、モードの数字の後につくアルファベットのことで、原子炉トリップしゃ断器の状態やプラントトリップが可能となるための条件などを示している。
【添付資料】
制御棒駆動装置動作試験時における運転上の制限逸脱状況概略図 [PDF:16KB]
保安規定違反に係る事象の原因と再発防止策の概要 [PDF:21KB]