津波から発電所を守る
基準津波の策定
福島第一原子力発電所では、海抜15m程度の大規模な津波による浸水で、非常用ディーゼル発電機が停止し、燃料を冷やす機能を喪失。これにより、炉心(燃料)損傷などの重大事故が起こりました。
新規制基準※では、この事故を踏まえ、津波対策の大幅な強化が求められています。
※新規制基準:2013年7月に制定された原子力発電所に係る規制基準をいいます。福島第一原子力発電所の事故の反省などを踏まえ、それまでの規制基準に代わるものとして新たに制定されました。
基準津波
原子力発電所に大きな影響を及ぼすおそれがある最大規模の津波を「基準津波」といいます。
基準津波の策定は、最新の知見を踏まえ、地震だけでなく、地すべりなど地震以外の要因を想定し、より一層厳しい条件で策定します。
泊発電所の基準津波の策定
当社は、2013年7月の新規制基準適合性に係る申請において、基準津波による泊発電所の敷地前面における最大水位上昇量を海抜6.95m、また、最大水位下降量を海抜-5.91mとして申請しました。その後、津波の発生をより一層厳しい条件で再評価※し、それぞれ12.63mと-7.82mと説明しています。
現在、日本海東縁部に係る津波評価について検討を進めています。
※「地震による津波」と「地震以外の津波」のうち最も影響のある『陸上地すべりによる津波』の同時発生を考慮。
基準津波について、詳しくは以下をご覧ください。
泊発電所の津波対策
当社は、津波が建屋に浸入しないよう浸水対策を講じるほか、引き波の発生によって機器などの冷却に必要な海水の取水に支障をきたさないよう対策を実施しています。
津波が敷地に浸入しないよう防潮堤を設置
泊発電所では、福島第一原子力発電所の事故を踏まえた自主的な取り組みとして、海抜16.5m、全長約1,250mの防潮堤を設置していましたが、新規制基準への対応を進める中で発電所の安全性をより一層高める観点から、地中の岩盤に直接設置する構造の防潮堤を新たに設置します。新たな防潮堤は、設計等に関して原子力規制委員会の審査を受けており、早期に設置できるよう対応しています。なお、2022年3月から既設防潮堤の撤去工事を実施しています。
新たな防潮堤を設置するまでは、水密扉により建屋入口と建屋内の重要な機器が設置されたエリアへの浸水を防止します。また、冷却が必要な燃料は全て海抜31m以上にある使用済燃料ピットに保管しており、万一の場合でも冷却が継続できる多様な手段を確保しています。
【変更前】
【変更後】
泊発電所における新たな防潮堤設置に伴う既設防潮堤撤去工事の開始について(2022年2月25日プレスリリース)
津波で建屋が浸水しないよう水密扉を設置
津波が敷地に浸入したとしても、建屋が浸水しないよう、建屋入口と建屋内の重要な機器が設置されているエリアの入口に「水密扉」を設置しています。
建屋入口の水密扉
重要な機器が設置されているエリア入口の水密扉
引き波発生時でも海水の取水を継続できるよう貯留堰(ちょりゅうせき)を設置
津波による引き波発生時に、原子炉補機冷却海水ポンプ※による海水の取水が継続できるよう、取水口前面に「貯留堰」を設置しています。
※原子炉補機冷却海水ポンプ:非常用ディーゼル発電機の冷却などに必要な海水を供給する設備(4台設置)
貯留堰の設置イメージ(3号機)